蔵王権現さま 4 |

金峯山寺蔵王堂 蔵王権現
特別ご開帳 平成24年3月31日~6月7日 拝観料¥1,000円
この三体の仏たちはいつも強い風を受けている。 衣は吹き上げられ、赤い髪を逆立たせ、紅蓮の炎を背負う。 どこへでも飛んでいくように、どこからでも飛んでくるように、高く振り上げた足の親指を力強く反らせ、なにか見えないものに立ち向かっている。牙を鼻袋までのぱし、金色の眼を光らせ、真っ赤な口内から気炎を吐き、体を青く燃やす、三体の異形。 怖くはない。 ただ、ひたすら厳しい。 どうしていにしえの人は、吉野の山にこのような姿の仏を必要としたのだろう。
金峯山寺蔵王堂の本尊、蔵王権現立像は秘仏であり、ふだんは巨大な厨子の内に鎮まっている。中尊は7・28メートル、向かって右側が6・15メートル、左側が5・92メート
ル。大きい。厨子が閉じられていても、蔵王堂から遠く見わたされる大峯山地の奥までその霊気が響き渡るかのようだ。 多くの「仏」たちはインド中国を経てきた経典に書かれ、その姿も経典に基づいて形作られる。しかしこの蔵王権現は日本独自の仏であり、もちろんその異形も日本であみ出されたもの。 7世紀後半に奈良の葛城山に住む山岳修行者の役小角(えんのおづぬ・役行者とも)が大峯山の山上ケ岳で感得したという。 小角はその地で千日の修行をした際に、衆生を救う仏の出現を祈った。最初に現れたのは釈迦如来。しかし小角ば、その姿では乱れた今の世の猛々しい人々に響かない、と訴える。 次に現れたのは千手観音、しかし小角は、やはり乱世にはふさわしくない、という。 次に現れた弥勒菩薩にさへ 首をたてに振らなかった。 どうか、世に満ちた悪を打ち払うような強い仏をーーー そう望んだとき、地が揺れ、雷鳴が轟き、岩を割って現れたのが蔵王権現だった。 そう、あの恐ろしい忿怒(ふんぬ)の形相で。
厨子の下からこの巨大な像を見上げると、片足を高くあげて厨子を乗り越えようとしているように見える。
「だれだ、おまえを苦しめるのは。 もしや自分自身の心ではあるまいな」
優しいだけの仏ではなく、 魔をたたき割る怖い仏。 それは人間が求めたものだった。
JR東海インターネットより
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